新生児
2023/05/11
夫婦だけの暮らしや上の子供のお世話に赤ちゃんが加わって、生活が新たになる新生児期。よく泣き、よく眠る赤ちゃんを見て幸せな気持ちになる一方、「これでいいのかな?」とお世話の仕方に悩んだり、寝不足などで疲れが出たりするママ・パパも多いかもしれません。
ほんのわずかしかない新生児期を楽しむためにも、ここでは新生児期の赤ちゃんの特徴をはじめ、お世話のポイントや、よくあるトラブルなどについてご紹介します。ぜひ参考にして、赤ちゃんとの新生活に役立ててくださいね。
目次
そもそも、新生児とはいつからいつまでを指す言葉なのでしょうか。赤ちゃんは、ママのおなかの中で過ごす「胎児期」を経て生まれ、誕生した日を0日として日齢(にちれい)、月齢(げつれい)をカウントします。新生児期は、1歳未満の「乳児」期のうち、生後28日までの赤ちゃんのことです。
<日齢や月齢、年齢ごとの赤ちゃんや児童の定義>
・新生児:乳児(1歳未満)のうち、出生後28日までの赤ちゃんを新生児と呼びます。
・乳児:1歳に満たない赤ちゃんのこと。生後間もなくから満1歳になるまでを指します。
・幼児:満1歳から小学校就学の始期までが幼児と呼ばれます。
※児童福祉法、および母子保健法による定義をご紹介しています。
生後1ヵ月に満たない新生児期の赤ちゃん。ママやパパにとっても、赤ちゃんにとっても、まずは新生活に慣れることが初めの一歩です。これまで、へその緒から栄養をもらっていた赤ちゃんは、おっぱいや哺乳瓶から栄養をとることだけでも精一杯のはず。また、排泄すること、眠ることなどにも少しずつ慣れていきます。
見ている限り、ただ「ねんね」「授乳」「おしっこ」「うんち」を繰り返ししているようにも思えますが、実際には一生懸命生きる力を養っているのです。
新生児期の赤ちゃんは昼夜の区別なく、短い周期でおっぱいやミルクを飲むため、しょっちゅう泣いてはおっぱいを欲しがるようにも感じられます。2~3時間置きに、およそ1日10~15回の授乳をすることが多いです。授乳の量は、1日に500~600ml程になります。ミルクの場合は、パッケージに記載されている月齢ごとの分量などの目安を見てあげます。
一生懸命赤ちゃんが哺乳している姿を見ると、幸せな気分になるママやパパも多いはず。中には唇に「吸いだこ」(まだ哺乳に慣れていない赤ちゃんの上唇の中央あたりにできる、白っぽく水ぶくれのようなぷくっとしたたこのこと)ができる赤ちゃんもいますが、基本的に心配する必要はありません。
赤ちゃんがおっぱいやミルクを飲んだ後は、いっしょに飲み込んでしまった空気を体の外に出すために、げっぷをさせてあげることが大切です。
やり方は、まだグラグラしている赤ちゃんの首に注意しながら、優しく抱き上げて大人の胸のあたりで赤ちゃんを縦抱きにしたり、大人のひざの上に赤ちゃんのおなかを下向きにしたりして体勢を整えます。その状態で、背中を優しくトントンと叩くかさすると、自然とげっぷが出ることが多いでしょう。もし、げっぷが出ないようなら、無理に継続せずに、そのまま寝かせてしまっても構いません。
なお、授乳と同様に、生まれたばかりの赤ちゃんは排泄も頻繁です。おしっこやうんちが出て、1日のあいだに何度もおむつを交換するのも新生児期ならではです。
おむつのサイズの選び方などについて詳しくは以下のページもご覧ください。
おむつのサイズ選びのポイントは?サイズアップのタイミングも紹介
新生児期は、赤ちゃんの意思とは無関係に筋肉が動く、「原始反射」と呼ばれる特徴が見られます。特に第1子を迎えたばかりのママ・パパは、赤ちゃんが突然驚いたように手をバンザイさせる仕草などを見ると、驚いてしまうかもしれませんが、生後3~4ヵ月の頃になると次第になくなっていくので、基本的には心配することはありません。
なお、反射の種類には次のようなものがあります。
・探索反射
探索反射は、生まれてすぐでもおっぱいが飲めるように備わっている反射です。赤ちゃんの唇やその周りに指などがふれると、赤ちゃんは首を上下左右に動かして何かを探すように動きます。
・吸啜反射
吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)は、口に入ってきた物に吸いつく反射です。これも、おっぱいを飲むために備わっているものです。
・把握反射
赤ちゃんの手のひらに人差し指をあてたとき、ぎゅっとにぎるのが把握反射です。足の裏も同じように、刺激を感じると指を内側に折り曲げます。
・モロー反射
モロー反射は、印象的な原始反射のひとつといえるかもしれません。赤ちゃんは、大きな音や明るい光、急な姿勢の変化などの刺激に反応すると、ビクッと動いて両手を大きく広げてから、何かに抱き着くような動作をします。
モロー反射について詳しくは以下のページもご覧ください。
モロー反射とは?期間や困ったときの対処法、よく似た疾病などを解説
・ガラント反射
ガラント反射は、赤ちゃんの腰付近の脊椎の片側をなでると、なでた側のお尻が持ち上がったり、なでた側に腰を曲げたりする動作のこといいます。産道を出ていくときに必要な反射だといわれています。
・歩行反射
歩行反射では、赤ちゃんを支えて足の裏を床につけると、足を前に出して歩くような仕草をします。
・非対称性緊張性頸反射
赤ちゃんの首を左右どちらかに向けると顔側の腕が伸び、後頭部側の腕が曲がる、非対称性緊張性頸反射(ひたいしょうせいきんちょうせいけいはんしゃ)というものもあります。
特に初めて赤ちゃんを迎えたご家庭だと、「赤ちゃんはどれくらい見えているのかな?聞こえているのかな?」などと、気になるママ・パパもいるかもしれません。
新生児の五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)は、まだまだ未発達の部分と、大人並みに発達している部分があります。
・視覚
新生児の視力は、0.01~0.02程度。30cmくらい先がなんとなく見えています。大人と同じような視覚を得るのは3歳頃といわれていますが、赤ちゃんは生まれてすぐからぼんやりとママのことを認識しています。
・聴覚
聴覚は胎児の頃から発達していて、赤ちゃんはママの声を聞き分けています。生まれて間もなく赤ちゃんの耳の聞こえをチェックする、新生児聴覚検査(新生児聴覚スクリーニング検査)も広まっています。
・嗅覚
赤ちゃんの嗅覚は鋭く、生まれてすぐからママの母乳のにおいがわかるといわれています。
・味覚
赤ちゃんは味を感じ取る器官「味蕾(みらい)」が発達しており、大人よりも味の濃さに敏感です。母乳の味もわかります。
・触覚
皮膚を通じて感じる冷たい、温かい、痛い、かゆいといった感覚も早くから発達しています。赤ちゃんは、ママやパパの手や頬がふれるときの感触を感じ取っていることでしょう。
始まったばかりのお世話に四苦八苦する中で、赤ちゃんに頻繁に泣かれると、もしかしたら気持ちまで疲れてしまうママもいるかもしれません。
ですが、赤ちゃんは泣くことによっていろいろなことを訴えています。赤ちゃんからのサインだと思って、今何を求めているのか考えてみましょう。
<杉原先生コメント>
「言葉や身振り手振りで伝えることができない新生児期の赤ちゃんは、空腹やおむつの蒸れなど、不快であることを泣いて表現するしかありません。おっぱいやミルクを吸う力や、おなかが空くと泣いて訴える力は、赤ちゃんが持って生まれた能力であり、持てる力を精一杯使って生きようとしている証なのです」
まだまだ頼りない新生児期の赤ちゃんのお世話には、不安が付き物。「大丈夫かな?」と不安に思いがちな症状と対策についてまとめました。
ママから赤ちゃんに栄養や酸素を送っていたへその緒は、出産後間もなく切られます(神経はないので、痛みはありません)。赤ちゃんに残ったへその緒は乾燥して縮み、生後1週間から2週間くらいを目処にぽろっと取れるのが一般的です。
赤ちゃんのお世話が始まったら、着替えや沐浴のタイミングで赤ちゃんのへそをよく見て、状態を確認しましょう。ジュクジュクしていたり、周辺に赤みが出ていたりして気になるときや、いつまで経ってもへその緒が取れないような場合は、産科または小児科を受診してください。
赤ちゃんの皮膚の色が黄色みを帯びる症状のことを、「黄疸(おうだん)」といいます。生後1週間の赤ちゃんの大多数は黄疸を生じますが、1~2週間で改善するのが一般的です。皮膚や目が黄色っぽく見えるのは、赤血球に含まれる色素のビリルビンの増加による影響です。
2週間を過ぎても改善しない場合は、母乳中の物質が原因の「母乳性黄疸」である場合があります。ただし、中には治療が必要な黄疸もあるため、2週間を過ぎても黄疸が収まらない場合は、専門医に相談してください。もしも母乳性黄疸だとわかれば、無理に母乳をやめる必要はありません。
皮脂分泌が活発化することで起こる乳児脂漏性湿疹。黄色がかったかさぶたのような湿疹で、かゆみがあります。髪の生え際にできることが多く、顔や胸、脇の下などにも出現することがあるでしょう。
ほとんどの乳児脂漏性湿疹は、積極的な治療をしなくても時間の経過とともに改善することが多いので、必要以上に心配することはありません。シャンプー中にかさぶたがはがれ落ちることも多いですが、なかなか取れないときは、ベビーオイルやワセリンを塗って、よくふやかしてから洗うと取れやすくなります(無理にはがしてはいけません)。
かゆみがひどい、赤くジュクジュクしている場合などは、皮膚科などを受診して適切な薬を処方してもらってください。
新生児期の赤ちゃんの肌には、ママの体内で生えた胎毛が残っていることがあります。
胎毛は、胎内の赤ちゃんを羊水などの刺激から守るために生える毛のこと。妊娠後期に抜け落ちるのが一般的ですが、中には胎毛を生やしたまま生まれてくる子もいます。「うちの子、毛深いのでは…?」と気になるママやパパもいるかもしれませんが、成長とともに抜け落ちるので基本的に心配はいりません。
赤ちゃんの頭はやわらかいため、出産時に産道を通ったときの圧力によって細長くなったり、同じ向きでずっと寝ていることによって平らになったりします。
顔や性格が人それぞれであるように、頭の形も赤ちゃんによって少しずつ違うといっていいでしょう。いろいろな形の赤ちゃんがいて当然ですし、頭の形が原因で起こる不都合はあまりないので、それほど神経質になる必要はありません。
ただし、どうしても気になる場合は、寝る向きを変えるなどして調整してみるのも手です。ただし、呼吸を妨げないよう、うつ伏せ寝は避けてください。また、近年は赤ちゃんの頭の形を整える治療を行うクリニックもあります。
<杉原先生コメント>
「本格的に子育てが始まって間もない新生児期は、ママもあれこれ悩んで当然です。おへそや皮膚の症状、頭の形、毛量といった部分は、目に見えるだけに気になりますよね。でも、こうした不安材料の多くは、成長とともに消えていくもの。もちろん、病的なものが含まれる可能性もありますが、神経質になりすぎなくても大丈夫です。普段から赤ちゃんの様子を見守っているママが肌で感じるものを大切にしつつ、肩の力を抜いて赤ちゃんに接していきましょう」
ここからは、新生児期の赤ちゃんのお世話のポイントを、心構えとともにご紹介します。これから赤ちゃんとの暮らしが始まるママ・パパも、把握しておけば新生活に役立つはずです。
生まれてからの赤ちゃんは、周囲の人との関わりによって感情なども育んでいきます。生まれてから最初の時期に重要なのは、特定の大人との信頼関係を築くこと。いつも誰かに守られている、愛されているという安心感から相手を信頼する「愛着関係」が形成されると、新生児の心は豊かに成長していきます。長い人生の中で周囲の人と関係を築いていくためにも、欠かせないものです。
積極的に赤ちゃんにふれたり話しかけたりして、向き合っていきましょう。
出産という大仕事を終えた産後のママの体は徐々に回復していきますが、妊娠前と同じくらいまでに回復するには、1年程かかるともいわれています。回復しきらない状態で慣れない育児に奮闘するママの中には、メンタルの不調を感じる方もいるはずです。
お世話の疲れやホルモンバランスの変化で心身の回復が十分でないことも考えられますから、「なんとなくおかしい」「いつもの自分じゃない」と感じたら、早めに周りのサポートを求めましょう。
特に、「産褥期(さんじょくき)」といわれる産後6~8週間は、出産で大きくなった子宮が収縮して元に戻ろうとしたり、女性ホルモンが急激に減少したりするため、何事もできる範囲で、上手に手を抜くことが大切です。
なお、次の3つに心あたりがあるときは、体と心からの危険サインかもしれません。ひとつの目安として考え、心あたりのあるときは赤ちゃんのためにもママのためにも、早めにケアすることが大切です。
<産後のママの状態に関する3つのチェックポイント>
・おなかが空かない、食べたい物が思い浮かばないなど、ママが自分の食事に対して無気力・無関心になる
・赤ちゃんが寝た隙に自分も眠ろうと思うが、いろいろな不安があってどうしても眠れない
・妊娠前まで楽しんでいた読書やゲームなどの趣味に興味が持てず、自分の時間を楽しみたいと思えない
新生児期の赤ちゃんは、まだふにゃふにゃとした体つきで、首が据わっておらずグラグラしています(首は数ヵ月かけて徐々に据わっていきます)。まだまだ頭が重く筋肉が未発達なため、首を支えずに抱き上げてしまうと、頭を支えきれずに大きく姿勢を崩してしまうので、くれぐれも注意してください。抱き上げるときや沐浴のときなどは、必ず体を支える手と別の手で、しっかり首を支えてあげましょう。
新生児期の赤ちゃんは体温を調節する機能が未発達なため、気温が上がれば体温も上がり、気温が下がれば体温も下がります。時々体をさわって汗ばんでいないか、反対に冷えていないかを確かめてあげましょう。
室内の温度は、22~27℃程度を目安に、季節や気候に応じた快適な温度に保ちます。また、冬場は空気の乾燥にも気を配り、湿度は50~60%程度を保つことがポイントです。
近年、SNSなどを通じて、小さな赤ちゃんとペットがいっしょに過ごす愛らしい日々を発信する方も増えました。ペットとの生活は、子供の情緒が育つなどのプラスの影響を与える一方、ペットの性格によっては事故につながる可能性もあることは知っておきましょう。嚙みつきなどの事故を避けるため、できれば室内のペットとは部屋を分けたほうが無難です。
<杉原先生コメント>
「SNSを見ていると、ほかの人がみんな自分より余裕を持って育児を楽しんでいるように見えて、落ち込んだり不安になったりするかもしれません。ですが、SNSに映っている生活は、あくまでも育児の良い部分を切り取ったもの。華やかに見えても、みんなどこかで悩み、つまずきながら育児に奔走しているはずです。まずは、自分の目の前にいる赤ちゃんとの時間を大切に、短い新生児期を楽しみましょう」
頻繁な授乳や寝かしつけなど、慣れない育児への不安などと戦いながら過ごす新生児期は、過ぎてみればあっという間に感じるものです。
そのときはつらいと感じることもあるかもしれませんが、生まれたての我が子とのかけがえのない時間を、じっくり味わいたいもの。産後のママは、パパや両親といった周囲の力も借りながら、無理をしすぎずに過ごすことを心掛けましょう。
新生児期のおよそ1ヵ月の短いあいだにも、赤ちゃんは驚くほど成長します。まだ目はあまり見えていなくても、声やにおいでよくお世話してくれる人の存在もわかっています。今回ご紹介した情報を参考に、赤ちゃんとのかけがえのない思い出を作ってくださいね。
監修
杉原 桂 先生
医療法人社団縁風会 理事長
ユアクリニック秋葉原 院長
昭和大学病院 小児科、千葉県こども病院 新生児未熟児科、独立行政法人国立病院機構相模原病院 小児アレルギー科などで研鑽を積み、ユアクリニックお茶の水 院長を経て、2019年よりユアクリニック秋葉原 院長。診断・治療という手段を通じて、患者さんたちを幸せにするという想いで診療にあたっている。ほか、医療系大学での講義も。
医療法人社団縁風会 理事長
ユアクリニック秋葉原 院長
昭和大学病院 小児科、千葉県こども病院 新生児未熟児科、独立行政法人国立病院機構相模原病院 小児アレルギー科などで研鑽を積み、ユアクリニックお茶の水 院長を経て、2019年よりユアクリニック秋葉原 院長。診断・治療という手段を通じて、患者さんたちを幸せにするという想いで診療にあたっている。ほか、医療系大学での講義も。